鍼灸について
鍼灸をわかりやすく解説します。
鍼灸とは
鍼灸は、鍼(はり)や灸(きゅう)で体のツボを刺激し、体が本来もつ自然治癒力を高める伝統医学です。鍼は、専用の鍼を使います。灸は、ヨモギの葉より精製されたもぐさを使います。
黄帝内経(中国最古、紀元前202年頃から書かれ始めたとされる医学書)の中に九鍼という鍼の種類が書かれており、その九つの鍼を病に対し、使い分けて治療をするという記述があります。一般に使われている刺す鍼もこの中の一つです。
す。その後、日本人の皮膚と感覚に合った細い鍼に改良して現在に至っています。
現在の鍼灸は<自然治癒力>を高める医術、代替医療の一つとして、100ケ国以上で臨床に取り入れられています。鍼灸治療についての研究や解明は、急激に増えています。日本の研究機関や大学ばかりでなく、欧米諸国でも活発に進めらています。鍼灸への期待や関心は昨今では更に高くなっている状況です。
公的な研究機関や、医療機関などで実験、研究がおこなわれており
・血液などの流れを促進する
・自律神経系の機能を調整する
・免疫能力を活性化する
・鎮痛作用がある
・筋肉の緊張を緩める
などが科学的に解明され、予防医学としての可能性も研究されています。
鍼灸のイメージ
鍼灸は肩こりや腰痛、痛みの治療に効くというイメージが強く、つらい箇所に鍼を刺すことで症状が改善すると思われている方も少なくありません。確かに、コリ固まっている筋肉に鍼やお灸の刺激は気持ち良く、血流も良くなり、神経痛などもすっきりと楽になります。
しかし本来の鍼灸治療は全身のコンディションを改善する治療法です。免疫力を高め、もともと身体があるべき健康な状態に導く、安心して受けられる治療です。
経絡とは
経絡は東洋医学独特の考え方に基づいたもので、体中に張り巡らされた気と血の通り道のことを指します。経絡を通じて気・血が体中をめぐり、臓腑や筋肉、皮膚などの機能を調節しています。一方で、気・血が経絡の中で滞ったり、各臓腑に十分にいきわたらない状態になると、体に変調が現れます。
ツボって何?
ツボは正しくは「経穴(けいけつ)」といい、経絡のところどころにあります。
全身に361のツボがあり、それら一つ一つの名称や表記法は、世界保健機構(WHO)によって決められています。
私たちの体は、ツボを介して気が出入りしています。そしてツボへの刺激は、そのまま経絡へと伝わります。鍼灸などが病気の予防・治療に力を発揮するのは経絡内の滞った気・血の流れを、ツボを刺激することで整えることができるからです。
気って?
東洋医学でいう気とは、もともと古代中国の思想から生まれたもので、宇宙を構成する基本単位とされています。気によって人体はつくられ、生命活動が維持されていると考えます。
鍼灸治療
鍼治療と灸治療を合わせて鍼灸治療と呼びます。
人の体は、身体の表面に刺激を与えると反射的にそこを守ろうとしたり、傷がついたと思い異常な状態を元に戻そうとします。そうした体がもともと持っている性質を利用して鍼や灸を用い、皮膚やツボを刺激を与えることで病状を改善したり、病気を予防したりしようとするのが鍼灸治療です。
●鍼治療
鍼治療と言っても、実はさまざまです。皮内鍼、円皮鍼、接触鍼、一般的に使われる鍼は毫鍼と呼ばれ0.1~0.5㎜と、とても細い鍼です。その鍼をツボにあて目的の深さまで刺し入れます。深さは、治療する部位や目的などによって異なります。症状に応じて刺し入れた鍼をすぐに抜いたり、しばらく刺したままにしたり、あるいは、刺したまま動かして刺激を与えるなどいろいろな治療法があります。
●灸治療
灸治療に使われるもぐさの原料は、ヨモギです。
灸治療には直接灸と間接灸の二つの方法があります。
直接灸の中で最も一般的な方法は米粒半分くらいの大きさのもぐさをツボの上に直接置いて線香で点火し、強い温熱刺激でツボを刺激しそこから生じる生体反応を利用します。もぐさが燃えきったらさらにその上にもぐさを置き繰り返します。体がバランスを崩しているときは熱さが感じられないことが多く、そのようなときは、熱さを感じるようになるまで灸を続けます。
間接灸は、皮膚にもぐさを直接置かずに台座があるものです。程よい暖かさで、筒にもぐさがついている商品などもあり自宅でも気軽に施灸することができます。
●灸の効果
熱刺激であるために、温める効果を利用しやすいので冷えへの対応は得意です。それぞれの症状に対応したツボを使うことで、痛みや症状を緩和・改善させることができます。
さらに、灸は、つわりを軽減したり、安産を促す効果もあるなど、妊娠中や出産前後にも効果があります。病院でも指導されるところもありますが、ツボの出方や位置は人それぞれです。鍼灸の有資格者に必ず指導を受けてください。
鍼灸師(しんきゅうし/はりきゅうし)とは
鍼灸師は「はり師」と「きゅう師」という2つの国家資格を持ちます。専門の学校に3年間通い、国家試験を受けます。国家資格を取得しても、すぐに通用できるわけではありません。車の免許と同じで、鍼灸術を繰り返し繰り返し習得しなければ社会には通用しません。勤務先で実践したり、勉強会に参加して知識を蓄え技術を磨きます。鍼灸師は、常に向上心を持ち知識や技術を磨き、成長していくべきだと思います。
これからの鍼灸は、西洋医学と融合し、一人一人の鍼灸師が確かな技術を身につけ、鍼灸の利点を社会にアピールしていかなければならないと思います。
鍼灸は未だ、解明されていません。更に勉めていかなければと思います。
東洋医学とは何か
広い意味では、アジア圏で生まれた伝統医学全般(ユナニ―医学、アーユルベーダ、チベット医学、中国の伝統医学など)を指します。日本での東洋医学とは、鍼灸や漢方薬などによる治療を指します。中国伝統医学が、日本に伝わったのは、5世紀半ば以降だと言われています。その後、日本独自のやり方に変わり、江戸時代に全盛期を迎え発展しました。しかし、明治時代に日本政府が、ドイツ医学を公式の医学として採用したため、東洋医学は徐々に衰退しました。
しかし、近年、欧米でも東洋医学を積極的に治療に取り入れる人が増え、再び注目されています。
西洋医学と東洋医学、どちらがいいか
それぞれ、得意不得意がありますので、どちらが良くてどちらが悪いといったものでは決してありません。西洋医学では治療が困難な病も、東洋医学では対応できることもあります。西洋医学は、原因を定めて治療しますが、東洋医学は、体全体を整えることによって、本来もっている自然治癒力を高める治療です。例えば、西洋医学で原因不明とされる、痛み、冷え、だるさ・・いわゆる不定愁訴などは、東洋医学では得意な症状の一つです。
西洋医学的な知識は、鍼灸師にとって必須です。鍼灸治療と西洋医学を融合させることにより、更に高い治療効果を発揮するのではと考えます。